
毎日オナニーするとセックスで満足できなくなる?人の研究で考える
毎日してる。昨日もした。なんなら今朝もした。
そこへ「オナニーしすぎると脳が慣れて、セックスで満足できなくなる」なんて話が流れてきたら。ちょっと待って、聞いてないんだけど、となりますよね。
落ち着いてください。先に答えを言います。
毎日しているだけで「セックスで満足できなくなる」と決めつける根拠は、今回確かめた人の研究にはありませんでした。この説を人の体で直接確かめた研究は、今回確認した範囲では見つかっていません。
どんな説?|「脳が慣れて、足りなくなる」という話

SNSで広まっているのは、こんな話です。
ドーパミンは、脳の中で信号を運ぶ物質のひとつ。受容体は、その信号を受け取る受け皿です。
たとえるなら、同じAVを何度も見ていると、最初のドキドキが薄れてくる。あの「慣れ」が脳の部品で起きている、というのが、この説の言い分です。
ちなみに「受け皿が減る」という話は、性の研究から出てきたものではありません。たとえば、重い肥満の人の脳を調べた米国の研究(2001年)で、受け皿の使える量が少なかった、という報告があります。その著者も、それが肥満の原因なのか結果なのかは判別できない、と書いています。
筋は通って聞こえます。では、誰か人の体で確かめたのでしょうか。
確かめようとした人たち|腰に管を入れたまま、オナニーした10人
この説をまるごと確かめた研究は見つかりませんでした。でも、①〜③を1つずつなら、近いところを調べた人たちがいます。
①ドーパミンは出るのか。
健康な男性10人が、腰に細い管を入れたまま、映像を見ながらオナニーして、イクまで行きました。そのあいだずっと、脳と背骨のまわりを流れる液(髄液)を採り続けて、ドーパミンが増えるかを見たんです。
(よく引き受けましたね、この10人。)
結果。ドーパミンが増えた、と統計的に言える変化は見つかりませんでした。
(腰の液での話です。脳の中は測れていません。)
②受け皿は減るのか。
ポルノを見るのがやめられなくて悩んでいる男性と、そうでない男性。その脳を、PET(体の中の物質の分布を写す検査)で撮って比べた研究があります。
結果。受け皿の「使える量」に、統計的に言える差は見つかりませんでした。
(比べたのは悩みがあるかどうかで、オナニーの回数ではありません。)
③セックスで満足できなくなるのか。
ノルウェーで4,160人に、オナニーの頻度と、性生活に満足しているかを聞いた調査があります。
たくさんして、満足な人。あまりしなくて、満足な人。たくさんして、不満な人。あまりしなくて、不満な人。
全部いました。

自慰の頻度と性生活の満足(ノルウェー・2022年発表)
| 群 | 女性 | 男性 |
|---|---|---|
| 自慰が多い × 満足 | 25.6% | 35.8% |
| 自慰が少ない × 満足 | 40.7% | 27.9% |
| 自慰が多い × 不満 | 21.6% | 16.5% |
| 自慰が少ない × 不満 | 12.0% | 19.8% |
分母は、この分析に入った女性1,736人・男性2,042人で、4,160人ではありません。「多い・少ない」は回答者の中で比べたときの呼び方で、4つに分けたのは著者の分析上の設定です。満足は性生活ぜんたいについての回答で、相手との行為だけの満足ではありません。出典:Fischer & Træen, Arch Sex Behav 2022(ノルウェー・18〜89歳)。
夢野カナエのアンケートの答えも、ひとつ置いておきます。ひとりでするときの気持ちは、リラックスや気分転換。ひとりが続いたあとに相手とするときの、その場の感じ方は「その時による」そうです。あくまでカナエさん一人の場合です。
○正確に言うと(研究の概要と、言えることの範囲)
「自慰でドーパミンが出すぎて受容体が減り、ふつうの刺激で満足できなくなる」という説を、人で直接確かめた研究は、今回確認した範囲では見つかりませんでした。
近い研究では、自慰とオーガズムのあいだに腰の髄液を調べても、ドーパミンに統計的に有意な変化は見つからず(男性10人と対照10人・2006年)、ポルノの使い方に悩む男性15人とそうでない10人で、安静時の脳(線条体)のドーパミン受容体の使える量に、有意な差は見つかっていません(2021年)。
どちらも小さな研究で、「影響は無い」と証明したものではありません。ノルウェーの4,160人の調査(2022年)では、自慰が多くて性生活に満足している人も、少なくて不満な人もいて、著者は原因と結果は言えないと書いています。
※Krüger 2006・Eur J Neurosci(著者所属はスイス・抄録)/Stormezand 2021・Psychiatry Res Neuroimaging(著者所属はオランダ・抄録)/Fischer & Træen 2022・Arch Sex Behav(ノルウェー・横断調査)。
研究の概要
| 研究 | 国 | 対象 | 調べ方 | 発表 |
|---|---|---|---|---|
| 髄液の研究 | 著者の所属はスイス(実施国は要旨に記載なし) | 健康な男性10人と、年齢を合わせた対照10人 | 映像と自慰による興奮からオーガズムのあいだ、腰の髄液と血液を続けて採って測った | 2006年・European Journal of Neuroscience |
| 脳の受容体の研究 | 著者の所属はオランダ(実施国は要旨に記載なし) | 18〜50歳の男性。強迫的なポルノ使用がある15人と、ない10人(ネットと新聞の広告で募集) | PETで、安静時の線条体のドーパミン受容体(D2/3)の使える量を比べた | 2021年・Psychiatry Research: Neuroimaging |
| 頻度と満足の調査 | ノルウェー | 18〜89歳の4,160人(Webパネルから無作為に依頼・回答率36%) | 過去1か月の自慰の頻度と、性生活ぜんたいの満足を質問した | 2022年・Archives of Sexual Behavior |
説を3つに分けて、人の研究で分かっていることを並べました。
この説の①〜③それぞれについて、人の研究で分かっていること
| 説の中身 | 人の研究で分かっていること |
|---|---|
| ①自慰でドーパミンが出る | 脳の中の放出を人で直接測った研究は、今回確認した範囲では見つからなかった。腰の髄液では、ドーパミンとその代謝物に有意な変化なし(男性10人と対照10人・2006年)。血液のプロラクチンはオーガズムのあとに上がった |
| ②出すぎると受容体が減る | 自慰や性行為の頻度と受容体を人で測った研究は、今回確認した範囲では見つからなかった。強迫的なポルノ使用がある男性15人と、ない10人で、安静時の線条体の受容体(D2/3)の使える量に有意な差なし(2021年) |
| ③ふつうの刺激で満足できなくなる | 人で直接確かめた研究は、今回確認した範囲では見つからなかった。ノルウェーの調査(2022年発表)では、頻度と満足の組み合わせは上の表のとおり一方向ではなかった |
「見つからなかった」はPubMedとJ-STAGEでの確認(2026年10月)で、世界に1本も無いという意味ではありません。髄液の研究の著者は、脳の一部だけで起きる放出は腰の髄液では捉えられない可能性がある、と書いています。
ただし|「毎日しても平気」と決まったわけでもない

ここで「じゃあ大丈夫なんだ」と言い切れたら気持ちいいのですが、そこまでは言えません。理由は3つあります。
つまり、「毎日すると脳の受け皿が減って満足できなくなる」も、「毎日しても影響は無い」も、人の体で直接確かめた研究は、今回確認した範囲では見つかっていません。
で、どうすればいい?|回数だけで、自分の体を決めつけなくていい
回数を数えて「自分の脳はもう鈍くなった」と決めつける必要はありません。
ただ、やめたいのにやめられなくてつらい。相手とのセックスでうまくいかないことが続いて困っている。それは、説が正しいかどうかとは別の、あなた自身の困りごとです。
ひとりで抱えずに、泌尿器科や婦人科、心の相談の窓口を頼ってください。

困っていないなら気にしすぎる事は無いような気がしますね。
ひとりでしたあとに、後悔や寂しさが残る人は、気持ちの面からまとめたこちらの記事へ。
○今回の記事を書くにあたり使用した参考文献
- Krüger THC ほか. Serial neurochemical measurement of cerebrospinal fluid during the human sexual response cycle. Eur J Neurosci. 2006;24(12):3445–3452.(健康な男性10人と対照10人・腰の髄液)
https://doi.org/10.1111/j.1460-9568.2006.05215.x - Stormezand GN ほか. No evidence for decreased D2/3 receptor availability and frontal hypoperfusion in subjects with compulsive pornography use. Psychiatry Res Neuroimaging. 2021;311:111284.(男性15人と10人・PET)
https://doi.org/10.1016/j.pscychresns.2021.111284 - Fischer N, Træen B. A Seemingly Paradoxical Relationship Between Masturbation Frequency and Sexual Satisfaction. Arch Sex Behav. 2022;51(6):3151–3167.(ノルウェー・4,160人)
https://doi.org/10.1007/s10508-022-02305-8 - Wang GJ, Volkow ND ほか. Brain dopamine and obesity. Lancet. 2001;357(9253):354–357.(米国・重い肥満の10人と対照10人・PET)
https://doi.org/10.1016/S0140-6736(00)03643-6
この記事は、AIで下書きを作り、数字は原著(一部は要旨)で確かめたうえで、夢野アートが最終確認しています。


